《インダスター洗面》開発秘話：職人技と革新が融合した洗面ボウルの誕生秘話

今回は、2024年5月の発売から人気の洗面ボウル《インダスター洗面》の開発秘話をご紹介します。

一番苦労したのは塗膜性能です。《インダスター洗面》では粉体塗装を採用していますが、塗膜の厚みを確保しながら傷にも強い仕上がりを目指すために、何度もテストを繰り返しました。また、デザインが非常にシンプルな分、溶接時の歪みが目立ちやすいという課題もありました。特に、縦横まっすぐに仕上げるフラットなデザインは細かな粗が顕著に出やすいので、歪みを抑えるための工夫を製造工程に組み込む必要がありました。さらに、製品の角をシャープに見せるために45度のテーパーを採用していますが、この設計も安全性を確保しながら美しい仕上がりにするための微調整が難しいポイントでした。こうした細部へのこだわりが、製品全体の完成度を高めることにつながったと思います。

一体型デザインならではの使いやすさと美しさが、何よりのポイントです。ブラケットと洗面ボウルが溶接で一体化しているため、設置時の安定感は抜群です。階段の踏み板と同程度の強度を持たせているため、さまざまな空間で安心して使っていただけます。
また、見た目に反してステンレス素材の洗面ボウルは軽量で、持ち運びや取り扱いが比較的容易です。陶器のように割れたり欠けたりする心配もないので、設置作業もスムーズに進みます。
さらに、排水の効率性にもこだわりました。長年の経験を活かし、内部の勾配を緻密に設計しているため、水がスムーズに流れる構造になっています。設置する高さも自由に調整可能なので、子ども向け施設にも対応可能です。

《インダスター洗面》は、イメージ写真にもあるように、コンクリート打ちっぱなしの建物やガレージなど、無骨で荒々しい空間に特に映えます。個人的にはブラックカラーがお気に入りで、どんな空間にも洗練された印象を与えてくれると思います。
ただ、私たちが想像もつかないような新しい使い方を、建築家や空間デザイナーの方々が発見してくださることも期待しています。和風の空間や自然素材との組み合わせなど、意外な場所で新しい魅力を引き出していただけたら嬉しいですね。

デザイン賞への出品を通じて、海外からの反応も良い評価をいただいております。「ミニマリズムを感じさせるデザイン」や「日本らしい細部へのこだわり」が特に注目されたポイントだったと感じます。また、一体構造のため空間に馴染みやすいという点も気に入っていただけたのではないかと感じます。海外の方々にも、日本の美意識やものづくりの精神を感じていただけることは開発者冥利に尽きます。

　多田さん、ありがとうございました！